弁護士 奧野舞のブログ

弁護士法人シティ総合法律事務所(http://www.city-lawoffice.com/)

【医業】病院に対する業務妨害と診療契約の解除

【Q】当医院において,継続的診療契約を締結している恒例の患者様がいるのですが,「担当の看護師が気にくわない」「あいつを外せ」「待ち時間が長い」等という不満を,直接来院して大声で受付で怒鳴ったり,週に2~3回はクレームの電話をかけてきて,その対応に職員が相当な時間を割いているという状況です。

当院としては,もはや患者様との信頼関係が築けないものとして,診療契約を解除したいのですが,応招義務違反だと言われて,争いにならないでしょうか。

なるべく穏便に済ませたいと思っています。

 

【A】医療契約は準委任契約ですので,当事者双方がいつでも解除できるのが民法上野原則です。

ただし,医師法上の「応招義務」によって,正当な事由がなければ医師は診療を拒んではならないということになります。

そして,当該医療機関が,患者様のトラブルに際し,信頼関係の破壊を理由に診療契約の解除をするためには,下記の要件が必要と裁判例で示されています。

 

①単なる信頼関係の破壊だけでは十分ではない

②患者が医療機関の業務を妨害したり,医療機関に対して不当な要求をしたりするなどの事由が必要

③診療契約の解除によって患者の病状が悪化するおそればない場合であることも必要

 

①②については,裁判例(大阪高裁平成24年9月19日決定)で述べられている点としては,特定の患者を長年にわたって診てきた診療機関が,当該患者の症状が治癒ないし改善していないにもかかわらず,診療行為を拒絶することは原則として許されないとしながらも,医療機関が多数の患者と診療契約を締結し,それぞれの患者に対して同様に診療義務を負うものであることから,緊急やむを得ない場合を除いては,特定の患者に対する診療のみを優先することはできないとしています。

 

具体的ケースに当てはめて考えてみると,継続的に通院されている方について,症状の改善もないのに一方的に医療機関から「信頼関係がなくなったから解除」ということでは,診療拒絶の正当な事由は否定されるものの,患者側の要求が医療機関側にとって無理難題を押し付けるものであって,クレーム対応等についてもはや限られた人数のスタッフでは対応しきれず,他の患者様への診療行為に影響を及ぼすような事態にまで至ってしまったのであれば,それは当該患者の診療行為を拒否しても合理的理由があるものといえる,ということになります。

 

③については,当該患者の症状や診療状況によって個別具体的に判断されるところであろうと思います。

 

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