弁護士 奧野舞のブログ

弁護士法人シティ総合法律事務所(http://www.city-lawoffice.com/)

【医業】【労働】労働契約法18条の無期転換条項の高度専門職への適用について

【Q】

うちの病院では,有期労働契約(1年ごとに契約更新)で医師を雇用しています。労働契約法18条によると,5年を超えて有期労働契約を更新すると,労働者側に無期労働契約への転換を求める請求権が発生するとされています。

正直,医師の年収も相当高額なものなので,患者が少しずつ減少傾向にあるうちの病院の資金繰りを考えると,雇用継続について責任が持てないので,無期契約への転換請求権は,放棄してほしいと思っています。契約締結時において,「事前に無期転換請求権を放棄する」合意をすることは可能なのでしょうか。

 

【A】

まず,有期契約の労働者が医師などの高額収入が発生する専門職であるということを別にして考えると,厚労省のスタンスとしては,契約更新の条件として無期転換請求権を事前に放棄させることは,労働契約法18条の趣旨を没却するものとして公序良俗に反して無効と解される,と示しています。

 

ここから,同法18条の趣旨としては無期転換請求権の事前放棄は原則として認められないと考えることができます。

 

いまだ裁判例などが存在しないのですが,学説レベルでは,

・高額の報酬で任期を限って雇用される高度専門職については,5年を超える場合でも無期転換申込をしないことを事前に合意することは,労働契約法18条の趣旨を没却しない。

・無期転換請求権発生後の放棄であれば,労働者の自由な意思に基づく場合に限り,労働契約法18条の趣旨を没却しない。

 

・・・といった議論があるようです。

2つ目は,無期転換請求権が発生した「後」の時点での,自由な意思に基づく請求権放棄なので,法の趣旨を没却しないというのは自然に理解できるところです。

 

1つ目については,どのように考えたらよいのでしょうか。

労働契約法18条の趣旨が,雇止めをされる側の労働者の不安解消と雇用の安定化を図ることにあることからすれば,「高額の報酬で任期を限って雇用されている」労働者については,生活を維持できるだけの相当額の報酬を本来の任期期間中に与えているのであるから,労働者の不安解消と雇用安定の必要性は,通常の有期契約労働者に比して低くなるのだ,という考えに基づくのでしょうかね・・・。

今後の裁判例の動向に着目してみたいと思います。