弁護士 奧野舞のブログ

弁護士法人シティ総合法律事務所(http://www.city-lawoffice.com/)

【医業】対応が難しい入院患者の退院について①

【Q】当病院には、認知症患者で入院中の方が複数います。

介助時に、看護師を始めとするスタッフの腕にかみつく、首を絞める、ナースコールを5分おきに繰り返す患者がいるのですが、こういった患者に対し、病院側から退院を求めることは可能でしょうか。

 

【A】

病院と入院患者の契約関係は、「診療契約」という法的には準委任契約の性質を持つとされているものです。

準委任契約は、民法上は当事者の一方から解除することができると定められているため、病院側が、入院患者の問題行動をとらえて、診療契約の解除(退院含む)を求めること自体は問題ありません。

これで、入院患者側が解除に応じてくれるのであれば、特に問題は生じませんから、まずは入院患者の家族やキーパーソンと十分にコミュニケーションをとって、どのような問題行動があったのか、病院側にどのような損失・支障が生じたのかを説明の上、診療契約の解除を目指すことになります。

 

もし患者が退院に応じない場合は、医師の「応招義務」の問題を考えないといけません。つまり、医師法上、患者からの診療の求めがある以上は、「正当な事由」なくして患者に退院を求めることはできないからです。

 

そして、どのような場合にこの「正当な事由」が認められるかは、確実な判断基準が決まっているものではないのです。

 

たとえば、病院側としては「入院患者が安全な環境で過ごし治療を継続できるように最大限の努力をしたけれども、やはり当該患者の問題行動が継続し、病院側としても適切な対応ができる限界を超えた」ものとして、以後の診療を拒絶したといえるのであれば、「正当な事由」ありとして、退院を強制しても法的に問題がないということになります。

 

「正当な事由」があったことを、病院側としてきちんと情報整理と証拠化を行っておくことが最も重要であり、患者の問題行動があった際には、

①現場で対応した職員間での即座の情報共有と上司への伝達

②報告書作成をその都度行って、問題行動への対応の詳細を記録すること、

③同様の事態が起こらないよう管理体制を工夫可能な場合はこれを実践すること

④家族やキーパーソンがいるようであれば、問題行動があるごとに随時の連絡・報告をすること

上記の①~④の過程を報告書や経過表で書類上で確認できるようにしておくべきです。

 

 

 

あらかじめ入院患者の退院を強制する場合があることを契約書や病院のガイドラインで示す場合、どのような内容が適切か、次回記載したいと思います。