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弁護士 奧野舞のブログ

弁護士法人シティ総合法律事務所(http://www.city-lawoffice.com/)

【医業】説明義務違反を問われる原因

医業関連

以前,インフォームドコンセントに関する記事を書きました。

 

これにも関連しますが,医師の説明義務違反が紛争に発展することを避けるために,どのような視点が必要か,考えてみました。

 

例を挙げて説明しますが,ステージⅣの肺がん患者に対して,適切な入院措置や検査,家族らへの説明がなされなかったとして,損害賠償請求訴訟に発展した事件(大阪地裁平成28年2月19日判決)があります。

 

この事件では,多発性転移を伴ったステージⅣの肺がんと診断された患者(女性・60代)が,被告病院の主要内科を受診し,その後,この患者の死亡後に遺族らが同病院の医師らの各措置に対して過失があったこと,医師らの説明義務違反があったことについて責任追及をしました。

裁判所の判断は,いずれの局面においても医師らの措置に過失はなく,説明義務違反も認められないとしており,請求が棄却されています。

 

受診から死亡までの経緯をみてみると,患者は,被告病院で頭部MRI検査を行ってがんの脳転移が見つかり,その5日後に次の診療が予約されていました。

ところが,予約日の2日前に,患者が血痰を吐き出したため,再び被告病院を受診し,この日は,各検査と薬の処方を受けて自宅に戻っています。その帰宅後の夜に,患者は自宅で倒れ,死亡しました。


被告病院での2度の受診時においても,各検査などに関する過失や説明義務違反が否定されたのは,受診時における患者の容体からして,患者側が主張する程の緊急性が認められなかったことが大きいようです。

そうはいっても,医学的知識のない素人の患者やその家族にとっては,「患者の身体に今何が起きているのか」,「それがどのくらい重篤なのか」,「今の状態からするとどのような処置をするのが適切なのか」,分かりやすく説明してもらえなければ,そう簡単に納得や理解ができるものではありません。


先程の事例でいえば,患者とその家族は,血痰を吐き出したことで,大慌てで被告病院を受診したのだろうと思います。検査を受けて,薬をもらって自宅に帰って数時間後,患者が再び血痰を吐いて亡くなってしまったのですから,「血まで吐いているのに,どうして医師は自宅に戻したのか」「自宅に帰さず,入院させるのが適切だったんじゃないのか」と考えることは,当然の流れといえるでしょう。


検査後の説明で,血痰を吐いていても,入院までの措置が必要がないことの理由が時間をかけて説明されていれば,患者側のご遺族の訴訟に対する意向も少し違ったものであったかもしれません。

医師に限らず,専門家にとって心がけなければならないのは,自分(専門家)にとっては当たり前・自然のことでも相手にとっては一大事であることが多々あり,相手の目線にまで降りた説明ができなければ,コミュニケーション不足が生じて無用な紛争を増やしてしまうことを頭に置いておく必要があると思います。

 

 

 

 

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