読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

弁護士 奧野舞のブログ

弁護士法人シティ総合法律事務所(http://www.city-lawoffice.com/)

【医業関連】インフォームドコンセント②

医業関連

昨年11月のブログで,インフォームドコンセントの考え方について簡単にお話しました。

とはいっても,何をどこまで説明しておけばよいのかは個々のケース(症例やどのようなリスクが伴う事例なのか)によって異なりますので,医師がどこまで説明義務を負うのか,著名な裁判例を示して,イメージを持っていただきたいと思います。

 

**********

最高裁平成13年11月27日第三小法廷判決】

この事案では,乳がんを患った患者が,担当医師に対し,実際に実施予定であった手術(「胸筋温存乳房切除術」)の他に,選択肢の1つとしてあった「乳房温存療法」について十分な説明がなされておらず,診療契約上の説明義務が尽くされていなかった,として争われました。

 

患者に対し乳がんの手が行われた当時は平成3年で,「乳房温存療法」は,当時の医療水準としては,確立されていませんでした。だからこそ,未確立の療法について,医師がどこまで説明義務を果たすべきかは,難しい問題であったといえます。

 

この裁判では,未確立の療法については,「常に(医師が)説明義務を負うと解することはできない」としながらも,「医師が説明義務を負うと解される場合があることも否定できない」と判断しています。

 

具体的には,

①その療法が少なからぬ医療機関で実施されていて,

②相当数の実施例があり,

③これを実施した医師の間で積極的評価もされているものについて,

④患者がその療法の自己への適応の有無や実施可能性について強い関心を有していることを医師が知った場合は,

⑤医師が知っている範囲で,

その療法の内容適応可能性やそれを受けた場合の利害得失当該療法を実施している医療機関の名称や所在などを説明すべき義務がある,

と判断されました。

 

その上で,実際にこのケースの患者においては,「乳房温存療法」について関心を戴いていたことが明らかだと認められ(患者が医師に対して手紙を送っていたようです。)し,担当医師も乳がんの専門医であり実際に「乳房温存療法」の実施経験もあった方でした。結果として,本件では説明義務の不履行が認められました。

 *********

 

医師の側が,絶対に説明義務違反の責任を問われないようにと,あらゆる未確立の療法について常に先端的な治療法を勉強・実践していくことには,限界があります。

 

また,大都市の大病院に所属する医師と,地方のクリニックの医師が行うことのできる診療には,医療設備等などの問題で,自ずと差異が出ます。

 

そのため,ひとりの医師が何に対してどこまで説明義務を負うのかということは,例えば「専門医」の認定の有無や,どの学会に所属している医師なのか・臨床経験はどうか,といったことを総合的に見た上で,どこまでの医療水準に従った説明義務を負うのか,という点が決まります。

 

医師自身が学会や研究会で先端的な医療の知識を吸収し続けることは,専門家として当然求められるわけですが,各自の専門分野に関する診療行為の中で,未確立の療法について関心を抱いた患者に出会った場合,情報収集の上,結果を丁寧に伝えるとともに,それをしっかり記録に残しておくことが重要です。

 

 

 

広告を非表示にする