弁護士 奧野舞のブログ

弁護士法人シティ総合法律事務所(http://www.city-lawoffice.com/)

【労働】育児・介護休業法の趣旨に反する配転命令

弁護士の奧野です。

大阪の先輩弁護士から「奧野さんのブログを楽しみにしています。」との激励の言葉を頂いたのを思い出したので,定期的に更新していきたいと思います。

 

私自身,多種多様な事件からまだまだ多くのことを学ばなければいけない立場ですので,登山など趣味の話はぐっと堪えて,近時の裁判例をチェックした中で話題を抽出して投稿していきたいと考えております。

また,特に小企業の経営者の方々,女性の経営者予備軍の方々にも着目して頂ける話題を書いていけたらと思います。どうぞ宜しくお願い致します。


労働裁判においては,使用者の労働者に対する配転命令が無効ではないかと争われるケースがあります。

判例解説ブログではないので,簡単に説明します。

こうした場合に配転命令の有効性とは,「配転命令に業務上の必要性が存するかどうか」,「業務上の必要性がある場合であっても、配転命令が他の不当な動機・目的でなされたものであるか,労働者に対して通常甘受できる程度を著しく超える不利益を負わせるものであるかどうか」という基準によって判断されることになります。


このうち,「労働者に通常感受できる程度を著しく超える不利益を負わせる」と裁判所が認めるのは,かなりハードルが高いとされています。

平成26年12月に出された静岡地裁の判決で,ある男性社員に対する配転命令(県内での支店の異動)の有効性が争われて裁判になったケースがありました。

 

裁判の中で,原告側は「帰宅時間が勤務時よりも1時間以上遅くなった。」「家族と過ごす時間が大幅に短くなり,子らの塾等への送迎や勉強等の援助,妻の援助が出来ないというライフスタイルの変更を余儀なくされた。」といったことを,労働者が被る不利益として主張していました。

この主張に対する裁判所の判断の要点としては,

①原告の妻は専業主婦であり,原告の通勤時間が延伸したとしても,子どもらの養育が困難となるような客観的事情は見当たらない。

②長時間通勤を回避したいというのは,年齢,性別,配偶者や子の有無等に関わらず,多くの労働者に共通する希望である。労働者の不利益の程度は,当該労働者の置かれた客観的状況に基づいて判断すべきものであり,…原告の主観的事情に基づいて判断すべきものではない,といったものでした。

労働者側からすれば,何とも厳しい判断ということになるでしょうが,使用者側としても全ての労働者の要望を叶える人事配置が現実的に可能かというと,これまた難しい現状もあります。

 

使用者側として,紛争予防の観点から工夫が出来ないものかと考えた場合,
①配転命令を出す以前からの,労働者に対する異動可能性に関する説明の実施

②労働者側の意向確認・要望等の聴取の実施+記録化

③配転の業務上必要性に加えて,労働者側の意向・要望の反映の可否に関する説明の実施

以上を,配転命令を出す以前に徹底しておくことが重要なのではないかと思います。

①は,上記の静岡地裁の裁判例でも「支店の異動可能性について,労働者に対する事前説明がなく,手続違反に当たるので配点命令は無効である」として主張されていた点でもあります。

労働者にとり生活環境の大小様々な変更を伴う配点命令を出す場合,その労働者側にとって異動が「想定外」であればあるほど,使用者との折り合いがつけづらくなるでしょう。数年毎の転勤・異動が当初から労働契約に含まれているような場合は別として,会社の慣例として「勤続〇年目までは,異動はない。」といった事実上の期待が労働者の間で生じているケースなどは,要注意です。異動の可能性があるのか,配点命令直前期になって説明を実施したのでは遅いでしょう。

また,こうした説明は書類の配布で行う場合もあるでしょうが,書類の内容に異動可能性に関する情報が「曖昧な記載ではなく」「明記」されているかも重要です。

 

②③は,使用者側が労働者側の通勤環境や家庭環境等を踏まえた上での調整を試みたこと,その調整の試みを形に残しておくという意味で,重要です。

 

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