弁護士奧野舞のブログ

弁護士法人シティ総合法律事務所(http://www.city-lawoffice.com/)

【女性活躍推進】【労務】Q&A②

Q2)当社は小さな事業所で,左官業を営んでいて,元々は男だらけの職場だったけれど,昨今の流れを受けて助成金を使って,女性従業員を一人雇入れました。

数年間よく働いてくれたのですが,妊娠で一旦仕事を休みたいということを言われ,色々と手続きをとろうとしているところです。

初めてのことで,社長の私も何から始めたらよいのか分かりません。法律違反にならないように,きちんと休ませてあげたいのですが,これから出産を控えた女性重行んには具体的にどのような法律が当てはまるのか,教えてほしいです。

 

A)まずは,産休・育休を押さえておくとよいでしょう。

<産前休業>

産前休業は,「出産予定日」の「6週間」前から,「労働者が請求すれば」取得できます。(労働基準法65条1項)

 

<産後休業>

「出産の翌日から8週間」は,労働者を就業させてはいけません。(労働基準法65条2項)

ただし,「産後6週間」を経過して,「労働者が請求し」,「医師が支障がないと認めた場合」には,就業可能です。

 

育児休業

育児休業とは,「1歳に満たない」子供を養育する「男女の」労働者は,「会社に申し出ることによって」,「子どもが1歳になるまでの間」で,希望する期間,育児のために休業することができます。(育児・介護休業法第5条)

 

使用者は,労働者から「育児休業の申出」があった場合には,原則として,この申出を拒むことは出来ないので,注意してください(育児・介護休業法第6条第1項)。

 

また,育児休業については,取得できる人とそうでない人がいるので,注意してください。

 

まず,以下に当てはまる人は,育児休業取得できません

①雇用された期間が1年未満

②1年以内に雇用関係が終了する

③週の所定労働日数が2日以下

④日雇いの労働契約の場合

 

次に,期間の定めのある労働契約を締結している方は,次の要件を満たせば,育児休業取得できます。

ア 同一の事業主に,引き続き1年以上雇用されている

イ 子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる

ウ 子どもの2歳の誕生日の前々日までに,労働契約の期間が満了しており,かつ契約が更新されないことが明らかでない

→つまりは,今の使用者のもとで1年以上働いていることと,育休明けも同じ使用者のもとで働くことが前提として必要になるわけです。

ただ,上記に当てはまる場合でも,子どもが2歳になる誕生日の前々日までに,労働契約が期間満了で終了し契約更新もないことが明らかな人については,育休の取得は認められない,ということです。

(同じ使用者のもとで働き続ける労働者にとってメリットになることを前提として制度なので,早期に退職することが明らかな労働者には,育休は保証されないということになるのです。)

 

育休については,次の場合を満たす場合に,「子どもが1歳6か月に達するまでは」,「会社に申し出ることによって」,休業期間を延長することが出来ます。(育児介護休業法第5条3項)

1歳6か月に達するまでの休業が認められるのは,次の場合です。

A 保育所に入所を希望しているが,入所できない場合

B 子の養育を行っている配偶者であって,1歳以降も子を養育する予定であった者が,死亡,負傷,疾病などの事情によって子を養育することが難しくなった場合

 

以上の休業制度は,法律上定められたものです。

各事業所の独自ルールで,休業日数を減らしたり,休業させなかったりすることは法令違反となるので,ご注意ください。

 

もちろん,事業所の福利厚生として,これらの法律の条件よりも労働者に利益となるように,プラスアルファの休業期間を設けたりすることは,法令違反ではありません。

 

人材確保の意味でも,どんどん取り組んでいただける会社様が増えたらと思います。

 

#育休 #産休 

   
   

 

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【女性活躍推進】【労務】Q&A①

「女性活躍推進」という言葉が世間に定着してきた昨今ですが,皆様の事業所において,女性従業員の雇用・定着の環境は十分に整っていますでしょうか。

 

元々が女性が多い職場であったり,大企業であれば相当な数の女性従業員がいることから,ある程度の仕組みが既に出来ていることも多いでしょう。

 

当法人のような弁護士事務所を含め,小規模の事業所においては,女性従業員の定着

と活躍について,まだまだ十分なフォローが出来ていないところもあるかと思います。

 

「人材不足」という言葉をよく耳にしますが,活用できる人材を発掘できていないだけ,の可能性もあります。

子育て中や子育てがひと段落した女性の中には,活躍できる素養を持っていても機会が与えられていない方も多くいます。

 

特に,事業主の方において,女性従業員の雇入れについて悩みを解消してもらい,今後の雇用+定着+活躍に利用していただくため,経験談も踏まえながら「労務」という観点から,少しずつQ&Aにしていこうと思います。

 

【雇入れ段階】

Q1)女性従業員を雇入れたいと考えているが,できれば長く働いてもらいたいので,若い方がいいと考えている。女性は,結婚や出産で仕事を辞める可能性もあると思うので,面接時の質問でどこまで突っ込んで聞いたらよいのか,わかりません。

 

A)ダイレクトに「結婚していますか?」「お子さんはいますか?」「今,交際相手はいますか?」「お子さんを作る予定はありますか?」等と聞くことは,場合によっては男女雇用機会均等法の指針に反するおそれがあるので,慎重に判断してください。

男女雇用機会均等法には,差別禁止規定があり,具体的にどういうことを禁止するのかについて,「平成18年10月11日厚生労働省告示第614号」という告示が出ています。

厚労省のHPで確認できます。)

 

この指針の中で,

「募集又は採用に当たって、女性についてのみ、未婚者であること、子を有していないこと、自宅から通勤すること等を条件とし、又はこれらの条件を満たす者を優先すること」を禁止すると書かれています。

 

婚姻の有無や子の有無などを,雇入れ時の面接できく事自体を禁止しているわけではないのですが,この指針は,「使用者が面接で上記のような質問をしている→婚姻の有無や子の有無でもって,採用について振り分けようとしている→未婚で子がない人を優先して採用しようとしている疑いが強い」といった考えのもとに,就職段階での差別を禁止しようといしているわけです。

 

そうはいっても,使用者としては,自社の仕事をしっかりと行ってもらうかどうかの見極めが必要なので,家庭環境などの情報がないとどうしようもない,という面もあるかと思います。

 

その場合は,上記のようなダイレクトに婚姻の有無や子の有無を尋ねるのではなく,使用者側が提示する労働条件と労働環境について具体的に説明し(何時から何時まで働いてもらいたい,たまには出張がある,有給は取りやすいが急な休みには対応しづらい状況である,など。),使用者側が求める働き方について,マッチングするかどうかを丁寧に確認していく,ということで,面接の目的は達成できるかと思います。

 

もちろん,以下のように,従業員自身から状況説明がある場合もあるでしょうから,その場合は均等法違反ということにはなりません。

使用者:「うちは終業時間が夕方5時だけど,その時間まで毎日働くことができそうですか。」

面接に来た人:「実は,まだ小学生の子どもが2人いて,夕食の支度などもあるので,5時までなら大丈夫ですが,残業が日常的に発生して,帰りが6時以降とかになるのであれば,難しい状況です。」

といったように,自ら話してもらえる分には問題ありませんし,使用者としてはその人の採用において具体的にイメージしやすくなるでしょう。

 

 

 

#女性活躍推進 #雇入れ #男女雇用機会均等法

 

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【労働】各種手当について考える

使用者の皆さんは,自社の給与明細をじっくりと見返したことはあるでしょうか。

基本給の他に,色々な手当が支給されていないでしょうか。

その手当について,どういった根拠でその労働者にその金額が支払われているのか,ぱっと正しく説明できるでしょうか。

 

労働者の割増賃金の計算をしてごらんと言われたら,ぱぱっと計算の基礎となる賃金部分を計算できるでしょうか。

 

当法人のHPでも,労務管理に関するコンテンツを増やしているところですが,「先代からの意向で・・・」とか,「同業他社のを真似して・・」といった理由で「何とな~く」支給している手当は,危険です。

 

いざ,会社が労働者から残業代の支払請求を求められたとき,これまで何となく支給してきた◎◎手当が全て,割増賃金の計算基礎単価に含まれてしまって,事実上,基本給部分が膨れ上がったような計算になり,予想を超える割増賃金の支払義務が発生してしまった・・・なんていう事態が,少なからず起こります。

 

みなし残業手当だって,残業時間数に応じて算出されたものでなければ,裁判で争った場合には,割増賃金の支払と同一の性質ものとは評価してもらえません。

 

賃金体系の変更やベースアップを検討する際に,見直してみてはいかがでしょうか。

 

#割増賃金 #手当 #残業手当

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【医業】病院に対する業務妨害と診療契約の解除

【Q】当医院において,継続的診療契約を締結している恒例の患者様がいるのですが,「担当の看護師が気にくわない」「あいつを外せ」「待ち時間が長い」等という不満を,直接来院して大声で受付で怒鳴ったり,週に2~3回はクレームの電話をかけてきて,その対応に職員が相当な時間を割いているという状況です。

当院としては,もはや患者様との信頼関係が築けないものとして,診療契約を解除したいのですが,応招義務違反だと言われて,争いにならないでしょうか。

なるべく穏便に済ませたいと思っています。

 

【A】医療契約は準委任契約ですので,当事者双方がいつでも解除できるのが民法上野原則です。

ただし,医師法上の「応招義務」によって,正当な事由がなければ医師は診療を拒んではならないということになります。

そして,当該医療機関が,患者様のトラブルに際し,信頼関係の破壊を理由に診療契約の解除をするためには,下記の要件が必要と裁判例で示されています。

 

①単なる信頼関係の破壊だけでは十分ではない

②患者が医療機関の業務を妨害したり,医療機関に対して不当な要求をしたりするなどの事由が必要

③診療契約の解除によって患者の病状が悪化するおそればない場合であることも必要

 

①②については,裁判例(大阪高裁平成24年9月19日決定)で述べられている点としては,特定の患者を長年にわたって診てきた診療機関が,当該患者の症状が治癒ないし改善していないにもかかわらず,診療行為を拒絶することは原則として許されないとしながらも,医療機関が多数の患者と診療契約を締結し,それぞれの患者に対して同様に診療義務を負うものであることから,緊急やむを得ない場合を除いては,特定の患者に対する診療のみを優先することはできないとしています。

 

具体的ケースに当てはめて考えてみると,継続的に通院されている方について,症状の改善もないのに一方的に医療機関から「信頼関係がなくなったから解除」ということでは,診療拒絶の正当な事由は否定されるものの,患者側の要求が医療機関側にとって無理難題を押し付けるものであって,クレーム対応等についてもはや限られた人数のスタッフでは対応しきれず,他の患者様への診療行為に影響を及ぼすような事態にまで至ってしまったのであれば,それは当該患者の診療行為を拒否しても合理的理由があるものといえる,ということになります。

 

③については,当該患者の症状や診療状況によって個別具体的に判断されるところであろうと思います。

 

#応招義務 #診療拒絶 #診療拒否 #医師法 

 

 

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【労務】セクハラと労災認定

業務に起因して精神疾患を患った場合,怪我などと異なり,労災認定のハードルが高い,そもそも使用者側が労災申請に基本的に協力しない,という話をよく耳にします。

 

セクハラに関していえば,セクハラが原因となって精神疾患を発病した場合について,これが業務上か業務外かを判断する場合について,厚労省は下記の判断基準を示しています。

 

①「新認定基準」で対象とされる精神障害を発病していること

精神障害の発症前おおむね6か月の間に,客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること

③業務以外の心理的負荷および個体側要因により当該精神障害を発病したとは認められないこと

 

以上の判断基準を満たすことが,「業務上」の疾病と認定されるために必要になります。

 

下記のリンクも参考にしてください。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120827.pdf

 

なお,セクハラ事案については,①セクハラ被害者が,加害者に対して被害をできるだけ軽くしたいとの心理から,やむを得ず迎合的な態度をとったり,②被害を受けてから相談行動をすぐにとっていなかったり,③医療機関受診時にもセクハラが原因であることを申し出ていなかったりなどということが,通常起こりますが,これらの事実があるからといって,セクハラがあったこと自体を単純に否定する理由にはなりません。

 

この点も,上記の「新認定基準」においては留意点として示されています。

 

#セクハラ #厚労省 #新認定基準 #労災 

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【労働】セクハラ禁止の就業規則

【Q】社内の服務規律の中に,セクハラ禁止条項も盛り込まれているのですが,近年のセクハラ被害の増加に伴い,見直そうと思っています,どのようなところを見直したらよいでしょうか。

 

【A】

職場におけるセクハラ対応の義務を定めているものに,「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(以下,単に「指針」といいます。平成18年厚生労働省告示第615号)があります。

 

この指針は,平成28年の改正(平成28年厚生労働省告示第314号)により,「職場におけるセクシュアルハラスメントには,同性に対するものも含まれるものである。また,被害を受けた者の性的志向又は性自認にかかわらず,当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも,本指針の対象となる」との文言が追加されました。

 

これによって,同性間の性的なハラスメントや,いわゆるLGBTを理由とするハラスメントも,事業者が雇用管理上措置を講ずべきとされたことになります。

 

そこで,セクハラ禁止の一般的な禁止条項に追加して,「職場の内外における性的な言動については,被害者の性的志向または性自認にかかわらず対象となる」という条項を定めることで,上記改正指針にならった規則となります。

 

また,実際に規則として定めるだけではなく,労働者に対するセクハラ禁止の周知・啓発が重要(こうした周知・啓発自体,指針に明記されているものです。)ですから,従業員への啓発の時間を定期的に設ける必要があります。

 

特に,LGBTという言葉が一般的に社会に浸透したのもごく近年の話ですから,労働者の世代によっては,性的志向性自認に対する寛容性について差が生じてしまう職場もあるかと思います。

 

経営者・管理者の意識改革と啓発への実質的努力が必要になってくる分野であると考えます。

その意味で,

 

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【医業】【労働】労働契約法18条の無期転換条項の高度専門職への適用について

【Q】

うちの病院では,有期労働契約(1年ごとに契約更新)で医師を雇用しています。労働契約法18条によると,5年を超えて有期労働契約を更新すると,労働者側に無期労働契約への転換を求める請求権が発生するとされています。

正直,医師の年収も相当高額なものなので,患者が少しずつ減少傾向にあるうちの病院の資金繰りを考えると,雇用継続について責任が持てないので,無期契約への転換請求権は,放棄してほしいと思っています。契約締結時において,「事前に無期転換請求権を放棄する」合意をすることは可能なのでしょうか。

 

【A】

まず,有期契約の労働者が医師などの高額収入が発生する専門職であるということを別にして考えると,厚労省のスタンスとしては,契約更新の条件として無期転換請求権を事前に放棄させることは,労働契約法18条の趣旨を没却するものとして公序良俗に反して無効と解される,と示しています。

 

ここから,同法18条の趣旨としては無期転換請求権の事前放棄は原則として認められないと考えることができます。

 

いまだ裁判例などが存在しないのですが,学説レベルでは,

・高額の報酬で任期を限って雇用される高度専門職については,5年を超える場合でも無期転換申込をしないことを事前に合意することは,労働契約法18条の趣旨を没却しない。

・無期転換請求権発生後の放棄であれば,労働者の自由な意思に基づく場合に限り,労働契約法18条の趣旨を没却しない。

 

・・・といった議論があるようです。

2つ目は,無期転換請求権が発生した「後」の時点での,自由な意思に基づく請求権放棄なので,法の趣旨を没却しないというのは自然に理解できるところです。

 

1つ目については,どのように考えたらよいのでしょうか。

労働契約法18条の趣旨が,雇止めをされる側の労働者の不安解消と雇用の安定化を図ることにあることからすれば,「高額の報酬で任期を限って雇用されている」労働者については,生活を維持できるだけの相当額の報酬を本来の任期期間中に与えているのであるから,労働者の不安解消と雇用安定の必要性は,通常の有期契約労働者に比して低くなるのだ,という考えに基づくのでしょうかね・・・。

今後の裁判例の動向に着目してみたいと思います。

 

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