弁護士 奧野舞のブログ

弁護士法人シティ総合法律事務所(http://www.city-lawoffice.com/)

【相続・財産管理】要らなくなった不動産の行く末は?

お盆です。

 帰省したついでに,「うちは将来相続でもめたりしないんだろうか。」「うちには財産がいくらあって,誰がどう管理しているんだろうか。」なんてことを考えたりしませんか?(しないですかね。)

 

実際の遺産相続の場面においても,生前に財産関係の整理をする場面においても,不動産があると,なかなか手間がかかります。

 

現金や有価証券は相続分どおりに分けることが出来ても,不動産は性質が異なります。

実際の遺産分割の場面では,どういう分割の仕方をしているかというと,大きく分けて,

①相続人のうちの1人が不動産を現物で取得して,他の相続人には,不動産の価値に相当する現金(「代償金」といいます。)を支払う方法

②不動産を売却してお金に換え,その現金を相続人全員で相続分どおりに分ける方法

があります。

 

実際に数字を入れてイメージしてみます。

 

【事例】

亡くなったAさん(男性・80歳)には,妻(75歳)が一人,子どもが二人(40代,既に本州でそれぞれ家庭を築いている。)いました。

Aさんが残した遺産は,Aさん名義の自宅(小樽市)の土地・建物(固定資産評価額で,合計3000万円)と,預貯金3000万円でした。

法定相続人である妻(相続分=2分の1)と子ども二人(各自の相続分=4分の1)の間では,相続分どおりに遺産分割をする意向で,合意が出来ています。

 

この事例の場合,Aさんの遺産総額が6000万円なので,妻が受け取る遺産総額は3000万円,子どもが受け取る遺産総額はそれぞれ1500万円になります。

あとは,Aさん名義の土地を今後どうするかによって,上記①②のいずれを選ぶのかを考えます。

 

例えば,妻が今後も小樽の自宅に住み続けるのであれば,①の方法を選択し,不動産は妻が取得して,不動産価値相当額の代償金を子どもら二人に支払えばよいということになります。

ここで,法定相続人である子どもらは,本来小樽の不動産についても4分の1ずつ権利がある(持分権といいます。)ので,3000万円の不動産のうち750万円分に相当する持分権があります。不動産を単独で取得した妻は,合計1500万円を現金で子どもら二人に対して支払えば,法定相続分どおりに遺産分割が出来たことになります。

 

では,妻が「一人で一軒家に住むのもしんどいから,老人ホームに入ることにした。自宅はもう誰も住まないので,処分に困っている。」と話している場合はどうでしょう。

子どもらも小樽に帰って生活する予定はないですし,不動産を残しておいても,空き家のままで固定資産税を毎年払い続けるだけになってしまい,もったいないですよね。

 

こういう場合は②の方法を選択し,小樽の自宅を売却して現金に換え,預貯金と同じように,相続分どおりに分けてしまえば,綺麗に分割できます。

 

もちろん,すんなりと①か②で分割できる場合ばかりではありません。

①の方法をとるとき,

事例では,Aさんが預貯金を3000万遺してくれたので,妻は自分が相続した1500万円の現金を子どもらへの代償金に充てて支払えば,一件落着でした。

仮に,Aさんが預貯金や他の財産を全く遺さないで亡くなり,妻自身の財産も無い場合,妻は小樽の自宅を取得したとしても,子どもらに代償金合計1500万円を支払うことができません。

 

②の方法をとったとき,

「そもそも,小樽の自宅はそんなすぐに買い手がついて売れる物件なのか?」という問題があります。

 

こういった不都合があって①②の方法を採ることが難しい場合,

誰も取得する予定がなく,買い手がつきそうにない不動産はどうなるかというと,相続人全員での「共有」物件という,何だか中途半端な状態になってしまいます。

 

このように,遺産に不動産があるか,その不動産を単独で取得したい相続人がいるか,代償金を準備できるか,不動産の処分の見込みがあるのか,誰が売却の手配をして話を進めるのか・・・といった,様々な事情の中で,「現時点でどのような分割方法がベストなのか」ということを考えていくのが遺産分割協議の場です。

 

いざ遺産分割の時になってから,法定相続人全員に連絡をとって不動産の分割協議をするのはなかなか骨が折れます。

 

今のうちに,どういう処分が現実的なんだろうと考えておくことをお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【労働】定額残業代は使用者のメリットになるのか①

業種によっては,時間外労働が日常的に発生してしまう場合があります。(運送業,タクシー・運転代行業などがイメージしやすいでしょうか。)

 

こうした場合に,使用者と労働者との合意によって,「時間外労働に対する対価を,定額の手当として支給する」場合があります。

 

これ自体は,行政解釈と裁判例によって認められていて,割増賃金を労基法37条の定めのとおりに計算して支払っても,定額の手当として支払っても,実際に労基法37条に基づいて計算した割増賃金額を下回らない限りは適法とされています。

 

前回の記事(http://maioqueno.hatenablog.com/entries/2015/08/05)で示した算定式を使って計算してみます。


【事例】

Aさんは,勤務先から受けていた給与・手当は下記のとおりです。

(※通勤手当などの法定除外手当は,計算の関係上省略します。)

 

・基本給 16万円

・残業手当 5万円

・1ヶ月の所定労働時間 160時間(8時間×20日間)

Aさんは,時間外労働が毎月平均して40時間ほど発生していました。

(なお,時間外労働は午後10時以降の時間帯には発生していなかったものとします。)

 

平成27年6月におけるAさんの時間外労働時間数が40時間ちょうどだった場合,労基法37条にもとづいて割増賃金を計算すると,

「16万円÷160時間×40時間×1.25=5万」となりますので,

残業手当として支払われた5万円は,労基法37条で算定した金額を下回っていませんので,使用者にAさんへの割増賃金支払義務は発生しません。

 

ところが,同年7月におけるAさんの時間外労働時間数が41時間だった場合,労基法37条に基づいた割増賃金は,

「16万円÷160時間×41時間×1.25=5万1250」となりますので,

残業手当5万円が,労基法37条で算定した金額を下回っています。

この場合,Aさんは残業手当との差額1250円について,使用者に割増賃金の支払請求が出来ることになります。

 

上記は,基本給と残業手当が明確に区分されて支払われていたケースを前提としているので,計算は簡単です。

 

 

会社によっては,割増賃金相当分の金額を「基本給」の中に含めてしまっている場合もあります。(上記のAさんの例でいえば,給与明細上「基本給21万円」が支給されているが,会社としては内5万円は割増賃金相当分として支給したつもりだった,というような場合です。)

 

この場合,労基法37条の算出結果と,割増賃金相当分の定額部分を比較することが出来なくなりそうです。

 

しかし最高裁判例最高裁第一小法廷昭和63年7月14日判決,最高裁第二小法廷平成6年6月13日判決)では,基本給のうち割増賃金に当たる部分は明確に区分されている必要があり,その区分が不明確な場合には『時間外割増賃金を定額で支払う』との合意の効力は無いものと判断されています。

 

したがって,もしAさんの勤務先の給与明細や労働条件通知書・雇用契約書等に「基本給21万円」とだけ記載されており,うち5万円が割増賃金相当分ということが明記されていなければ,使用者側がいくら「5万円は割増賃金の趣旨で支払っていたんです!」と主張しても,裁判所では認めてもらえない可能性が高いでしょう。

 

その結果,平成27年6月のAさんの割増賃金を労基法37条に基づいて計算すると

「21万円÷160時間×40時間×1.25=6万5625円」となり,

会社としては,平成27年6月に40時間分の時間外労働をしたAさんに対し,基本給+割増賃金の合計27万5625円について,支払義務が発生することになります。

 

手当を割増賃金相当定額分として支払う場合は,基本給との明確な区分をしておかないと,使用者としては想定外に大きな支出を伴うことになってしまいます。

 

もっとも,基本給と割増賃金相当分の区分が明確でなかった場合でも,「時間外割増賃金を定額で支払う」旨の合意が有効とされた裁判例もあります。

これは各事件の個別的な事情に着目する必要があるので,次回以降,裁判例を挙げて考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

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【労働】位置づけ不明な手当がついていませんか?

労働基準法37条で定められている「割増賃金」は,下記のような計算式で算出することが出来ます。

 

 ★基本給+★諸手当(ただし法定除外手当を除く。)×時間外労働時間数×割増率

    1ヶ月の平均所定労働時間

 

割増賃金を支払う使用者側からすると,「★」のついている金額が高くなる分だけ,労働者に支払う割増賃金が多くなる仕組みになっています。

 

労働者の皆さんは,ご自身の給与明細を手に取ってみてください。「○○手当」というのがいっぱい付いていないでしょうか。

このうち,上記の計算式の「★諸手当」に含むものがどれくらいあるでしょうか。

 

計算式の中にある「法定除外手当」というのは,その名のとおり,割増賃金の計算から外すことができる手当が,法律で決まっているのです。

 

具体的には,

①家族手当,②通勤手当,③別居手当,④子女教育手当,⑤住宅手当,⑥臨時に支払われた賃金,⑦1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金,です(労働基準施行規則21条)。

これ以外には,認められていません。

 

「じゃあ既存の手当に,①~⑦と同じ名前を付ければ,割増賃金計算から除外出来るんだ…」と考えてしまいそうですが,それも違います。実質の伴った手当の支給じゃないと,除外できません。

 

例えば,①家族手当なら,「家族の人数に応じて支給するもの」であれば割増賃金計算から除外できますが,人数に関係なく「一律◎万円」というような定めをしている手当は,除外されません。

 

通勤手当も,通勤距離や実質費用に応じた支給であれば除外可能ですが,距離にかかわらず一律支給しているものは,除外されません。

 

⑤住宅手当も,「家賃の一定割合」とか「持家のローン月額の一定割合」が支給されていれば除外できますが,「賃貸住宅の人は2万円・持ち家居住者は1万円」といった支給方法では,除外されません。

 

④子女教育手当については,労働局・労働基準監督署のホームページにも詳しくは書いていませんが,趣旨は従業員の子どもの教育の充実にありますから,例えば,高校・大学に進学中の子どもの人数に応じて支給されるという場合には除外可能となるでしょう。

 

使用者は,従業員に気持ちよく働いてもらうために様々な工夫をします。手当の新設もその1つであるかもしれません。(従業員家族には旅行でも行って家庭円満でいてほしいという気持ちを込めて「レジャー手当」とか,生活習慣病に気を付けてほしいから「健康手当」,とか。)

 

ただし,①~⑦の「法定除外手当」に当たらない位置づけ不明の手当が増えると,結局「諸手当」として割増賃金の算定式に加えなければなりません。

そうなると,万が一従業員から割増賃金を請求されたときに予想以上に割増賃金が膨らんでしまい,使用者が自分の首を絞めてしまうことにもなりかねません。

 

 

私自身,もし今の仕事をしていなかったら,毎月もらう給与明細の各種手当が何を理由にどういう基準で支払われているのか,気にせず一生を終えていたかもしれません(笑)。

 

お給料に手当がいっぱい付いている方は,お暇なときに,どの手当が割増賃金計算から除外されるのか考えてみてもよいかもしれません。

(…相当暇じゃないとやらないでしょうね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

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【離婚】離婚が可能になる別居期間の目安

夫婦の一方が離婚を望んでいても,もう一方が望まない場合,どうしたら離婚できるのでしょうか。

離婚協議はまとまらず,家庭裁判所で調停をしても,離婚には応じてもらえず,結局調停不成立。

残るは離婚訴訟を提起して,裁判所の判決でもって離婚を認めてもらうしかありません。

 

こうなった場合,「まずは一旦別居して,夫婦関係が破綻している状態を作り出して・・・」,なんていう話を聞かれたことがある方もいるでしょう。

 

では,一体何年別居すれば離婚が認められるのか。

実は明確な基準があるわけではありません。

 

まず,「有責配偶者」(簡単にいうと,不倫や暴力など離婚原因を作った側の配偶者のことを指します。)からどうしても離婚したい,という場合。

 

最高裁が,ある判決(昭和62年9月2日判決)の中で離婚が認められるための一定の基準を示しています。

①長期間の別居

②未成熟子の不存在

③過酷状況の不存在(離婚を求められた側が,経済的に困窮しないかという話)

 

この①が何年くらい必要かは,その夫婦の同居期間が何年で,別居期間がこの内何年かということも考慮されるので,明確に「★★年別居したから,離婚できる」という単純な話でもありません。

 

また,①は②や③と合わせて考えられ,果たしてこの夫婦に離婚を認めてもよいのだろうかと言う観点からの総合考慮になるので,人によっては10年別居していても離婚できるかどうか微妙なケースもあるようです。

 

仙台高等裁判所・平成25年12月26日判決~別居期間9年余りで離婚できず。(同居期間は18年程度)

・福岡高等裁判所・平成16年8月26日判決~別居期間9年あまりで離婚できず。(同居期間は21年)

最高裁判所第一小法廷・平成16年11月18日判決~別居期間2年4か月で離婚できず。(同居期間は6年7か月)

 

実際のところ,有責配偶者から相談を受けた弁護士は,細かく事情を聴き取って,確実に離婚ができそうなタイミングを見計らって訴訟を提起したり,若干不安が残ってでも訴訟に持ち込み,訴訟手続の中で離婚条件を整えて和解をする方向で話を持って行ったりと,ケースごとに何が最善か検討するわけです。

 

では,「有責配偶者」ではない人が離婚を求める場の,別居期間はどの程度必要でしょうか。

 

有責配偶者のケースよりは年数が少なくなるとは思いますが,何か明白な離婚事由に該当しない限りは,3年~5年くらいの期間は別居が必要と考えられます。

 

要は,「夫婦関係が破綻しきっている」といえるのかを,別居の経緯・別居期間中の夫婦の交流状況や,別居期間自体の長さから読み取った上で,裁判官が判断することになります。

もちろん,同居期間の長さや夫婦それぞれの経済状況,未成熟児の有無なども考慮されます。

 

※余談

話は逸れますが,最近某女性誌で,「離婚してかえって良い関係を築くことが出来た元夫婦」を何組か紹介している記事を見かけました。

別れて別居してもなお,ビジネスパートナーだったり,定期的に一緒に趣味のゴルフを楽しんだりするそうです。

なんだか不思議な感じもしますが,これも時代の流れなのかもしれません。

元夫婦それぞれが新しい人生を歩むことを受け容れることが出来て,恨みつらみは一切なし,離婚後も交流することが互いにとって良いと感じられれば,そういう関係も成り立つのかもしれません。

ただ,やっぱり女性の側にもある程度稼ぐ力があるからこそ,成り立ちやすい話なんだろうとは思います。

 

 

 

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【起業】個人事業主,中小企業のサポートについて思うこと

私は,札幌で女性の起業支援活動を行っているEZONA(エゾーナ)という団体に参加しています。
年に5~6回,小規模のセミナーや相談会を開いていますが,個人事業主として既に特定の分野でご活躍されている方とお会いする機会も多々ありますが,その方々のお話を聴いているとき,私も何か女性ならではの視点での,差別化を図ったサービスが提供できないかと,想像を巡らせています。

 

最近お会いした方は,キッチンコーディネーターのお仕事をされている方がおり,「台所」という場所を,カタログの中からセレクトするだけでなく,シンクの深さや台や棚の高さ等,使う人の身体や生活スタイルに合わせたオーダーが実現できるお仕事をされていました。今でこそ,男性が台所に立つのは珍しくありませんが,毎日台所に立つ女性にとってこだわりが産まれる場所であり,女性ならではの視点だなあと感じました。

 

これから起業を考えている方やそうでない方も,仕事を持つ女性が集う中で,互いのニーズを発見したり,新たな需要が産まれる瞬間に出会えることを期待し,今後もEZONAメンバーと協力して,セミナー開催等に励んでゆければと思います。

 


また,この4月から,北海道中小機構において経営支援アドバイザーを月に1度担当させて頂いています。
中小企業様から無料にてご相談を受けて,法務全般に関わる相談を担当しております。

人手が多くいる大企業と異なり,中小企業は適材適所で従業員を雇用し,モチベーションを維持しながら成長できる環境を作るために試行錯誤しなくてはいけません。賃金体系から人事考課システムまで,徹底的に考え抜き,従業員を守ることに必死になっている経営者の方々と接する時,私自身も尊敬の気持ちとともに,決して手は抜けないと気持ちを引き締めるきっかけにもなっています。

 

生まれ育った北海道の経済を支えている,多くの中小企業様のお役に立てるよう,頑張らせて頂きます。

 

 

 

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【労働】育児・介護休業法の趣旨に反する配転命令

弁護士の奧野です。

大阪の先輩弁護士から「奧野さんのブログを楽しみにしています。」との激励の言葉を頂いたのを思い出したので,定期的に更新していきたいと思います。

 

私自身,多種多様な事件からまだまだ多くのことを学ばなければいけない立場ですので,登山など趣味の話はぐっと堪えて,近時の裁判例をチェックした中で話題を抽出して投稿していきたいと考えております。

また,特に小企業の経営者の方々,女性の経営者予備軍の方々にも着目して頂ける話題を書いていけたらと思います。どうぞ宜しくお願い致します。


労働裁判においては,使用者の労働者に対する配転命令が無効ではないかと争われるケースがあります。

判例解説ブログではないので,簡単に説明します。

こうした場合に配転命令の有効性とは,「配転命令に業務上の必要性が存するかどうか」,「業務上の必要性がある場合であっても、配転命令が他の不当な動機・目的でなされたものであるか,労働者に対して通常甘受できる程度を著しく超える不利益を負わせるものであるかどうか」という基準によって判断されることになります。


このうち,「労働者に通常感受できる程度を著しく超える不利益を負わせる」と裁判所が認めるのは,かなりハードルが高いとされています。

平成26年12月に出された静岡地裁の判決で,ある男性社員に対する配転命令(県内での支店の異動)の有効性が争われて裁判になったケースがありました。

 

裁判の中で,原告側は「帰宅時間が勤務時よりも1時間以上遅くなった。」「家族と過ごす時間が大幅に短くなり,子らの塾等への送迎や勉強等の援助,妻の援助が出来ないというライフスタイルの変更を余儀なくされた。」といったことを,労働者が被る不利益として主張していました。

この主張に対する裁判所の判断の要点としては,

①原告の妻は専業主婦であり,原告の通勤時間が延伸したとしても,子どもらの養育が困難となるような客観的事情は見当たらない。

②長時間通勤を回避したいというのは,年齢,性別,配偶者や子の有無等に関わらず,多くの労働者に共通する希望である。労働者の不利益の程度は,当該労働者の置かれた客観的状況に基づいて判断すべきものであり,…原告の主観的事情に基づいて判断すべきものではない,といったものでした。

労働者側からすれば,何とも厳しい判断ということになるでしょうが,使用者側としても全ての労働者の要望を叶える人事配置が現実的に可能かというと,これまた難しい現状もあります。

 

使用者側として,紛争予防の観点から工夫が出来ないものかと考えた場合,
①配転命令を出す以前からの,労働者に対する異動可能性に関する説明の実施

②労働者側の意向確認・要望等の聴取の実施+記録化

③配転の業務上必要性に加えて,労働者側の意向・要望の反映の可否に関する説明の実施

以上を,配転命令を出す以前に徹底しておくことが重要なのではないかと思います。

①は,上記の静岡地裁の裁判例でも「支店の異動可能性について,労働者に対する事前説明がなく,手続違反に当たるので配点命令は無効である」として主張されていた点でもあります。

労働者にとり生活環境の大小様々な変更を伴う配点命令を出す場合,その労働者側にとって異動が「想定外」であればあるほど,使用者との折り合いがつけづらくなるでしょう。数年毎の転勤・異動が当初から労働契約に含まれているような場合は別として,会社の慣例として「勤続〇年目までは,異動はない。」といった事実上の期待が労働者の間で生じているケースなどは,要注意です。異動の可能性があるのか,配点命令直前期になって説明を実施したのでは遅いでしょう。

また,こうした説明は書類の配布で行う場合もあるでしょうが,書類の内容に異動可能性に関する情報が「曖昧な記載ではなく」「明記」されているかも重要です。

 

②③は,使用者側が労働者側の通勤環境や家庭環境等を踏まえた上での調整を試みたこと,その調整の試みを形に残しておくという意味で,重要です。

 

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【起業】札幌での女性起業支援について

私は現在,札幌で女性の起業を支援するグループ(EZONA~エゾーナ~)に所属しています。

そこで出会った方とのお話やセミナーで知った札幌の現状というのは,

自分が思っている以上に,「札幌は女性が働きづらい街になっている」というものでした。

 

子育て中でフルシフトで働くことが難しくなった女性,

スキルもやる気もあるのに,労働条件が合わなくて泣く泣く仕事から離れている女性,

そんな方々のお話を聞くたびに,もっと札幌を「女性が活躍できる街にしたい」という想いが強くなりました。

 

例えば,起業したいという強い理念と実行力を持っていても,

男性から「自立のための起業なんて,甘く考えているんじゃないか」「自己満足じゃないか」なんていうことを言われるのが怖くて,委縮して相談もできなくなってしまう女性もいます。

 

そういう女性に対し,女性が手を差し伸べてあげられる環境を作り,

「自己満足じゃない,食える会社」が札幌にどんどん出来るように…というのが,EZONAメンバーの夢です。

そしてゆくゆくは,女性経営者の増加が女性の雇用拡大を産んで,札幌が「女性の働きやすい街」になったらいいなと考えています。

 

今回は夢を語る回になりましたが,次回からは少し具体的に,

「弁護士・社労士の仕事の範疇で,どういった女性支援が出来るのか」を考えていきたいと思っています。

 

次回のテーマは,「女性に優しい就業規則」です。

 

 

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